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2024/05/19 06:56 |
嫉妬
4月6日士郎の日ってことで、誕生日設定にさせていただきました。
弓士です。ONLY ONEのコトシロさんネタです。
アーチャーが久しぶりに遠坂家に行くと、凛とセイバーとイリヤがなにやら話し合っていた。
「その作戦だとリンが起きれないでしょ」
「だ、大丈夫よ」
「夜からならばいけるのではないでしょうか」
「それはダメよ。シロウは気配に聡いもの。半端に気付くわ」
三人で唸っている。話の中に出てきた士郎は今、衛宮家で晩御飯を作っている。アーチャーも手伝っていたが、凛に呼び出されてここまで来た。
「いったい、何の話かね」
「あ、アーチャー」
イリヤと凛がようやく顔をあげて、意地悪な笑みを浮かべた。何やら嫌な予感がする。
「士郎に仕掛けるイタズラを考えているのよ」
「イタズラ? エイプリルフールは終わったし、ハロウィンはまだまだ先だぞ」
「違うわ。明日は士郎の誕生日よ」
凛の言葉の内容を反芻してアーチャーは理解すると驚きに目を見張った。
「士郎の誕生日だと?」
「あら、自分のマスターの誕生日を知らなかった?」
「その日はアーチャーの生前の誕生日でもあるんじゃないの? だから知ってると思ってたんだけど?」
「……いや……それは覚えていない」
記憶を探るが摩耗していて断片的なことしか覚えてなかった。
「だが、士郎の誕生日だとしても、どうしてイタズラすることになるというのだ」
「うーん、習慣?」
「昔からだしね」
凛とイリヤの答えにアーチャーは士郎に同情した。
「では、凛とイリヤの時も同じようにしているのですか?」
「うん、してるわよ。今年は凛の誕生日が聖杯戦争と重なって出来なかったから、来年は倍にしてやってあげるわ」
「……遠慮する」
「まあ、私達は友達でしょ。誕生日は盛大に祝わなくちゃ」
二人で言いあう姿を見て、セイバーとアーチャーは顔を見合わせた。
「これが友情らしい」
「彼女達らしい友情ですね」
「セイバーは他人事のように思っているが、私たちには召喚日と言う誕生日があることを忘れてはいけない」
「はっ……そうでした」
まだ先の話だがイタズラされると確信して、そろってため息をついた。
「来年の話ではなく! 明日の士郎の誕生日よ! あ、アーチャーはケーキよろしくね」
「……それはかまわないが、何のイタズラをするつもりかね?」
「それを相談していたんだけど、朝から士郎の布団の中にもぐりこんで、三人で責任をとってもらうわよっていうのをしようとしたんだけど」
「だから、それだとリンがちゃんと起きないでしょ! そんな凶悪な顔で言われても色気なんてないわよ!」
「なによ! この幼児体型が!」
「そ、それは私にも喧嘩を売ってますか、凛」
三人で騒ぎ始めたのを見て、アーチャーは眉間にシワを寄せた。
「凛、セイバー、姉さん。とりあえずイタズラは黙認するが今の作戦は却下だ」
「どうしてよ、アーチャー」
「却下だ」
重ねて言うと、ようやく凛は不承不承頷いた。
「嫉妬だわ」
「ちょっとしたイタズラなのにね」
「心狭いですね」
小声で喋る三人に振り返ってにっこりと笑ってやる。
「お茶はいらないらしいな。私は帰るぞ」
「いります!」
黙らせることに成功はしたが、明日を思うとため息を止めることができなかった。

言峰士郎は忙しい。まずはまだ学生である。家が教会をやっているうえに、父親であった神父が行方不明なので後任が来るまで仕事は山積みだ。自分が神父見習いをしているのでこのままここの跡を継ぎそうな予感はある。さらに衛宮家で食事の面倒を見なくてはいけない。あの家の主のイリヤは微妙な料理の腕だし、セイバーは食べる専門だ。お隣の藤村大河はいうに及ばず。凛はきちんと料理するが管理者としてそれなりに忙しい。今は聖杯戦争のせいでいろいろと駆けずりまわっているし、来年はロンドンへ留学するために準備も必要だろう。
「……アーチャーがいてくれて助かった」
「どうした、士郎」
「なんでもない。これはこれでいいか?」
スープの味を確認してもらうとOKをもらって口元が緩む。和食は好きだが、まわりが中華を好んだのであまり作る機会は少なかった。今、アーチャーから学んで覚えている最中だ。率先して台所に立つ者が少ないのでアーチャーを独り占めできる貴重な時間とも言える。なにせ、アーチャーは凛やイリヤに大人気というか、こき使われている。
「アーチャー、ちょっとこっちの方をお願い」
「わかった」
その忙しい合間の貴重な時間を今日はやたらと奪われれている。いつもなら一緒に作る夕食も結局は士郎が一人で仕上げてしまった。テーブルの上に出来た料理を並べている時もアーチャーは他のところで手伝って姿を見せなかった。
「おーい、ご飯できたぞ!」
用意を整えてから、声をかけるとあちこちから人が集まってくる。
「すまないな、士郎。ほとんどまかせてしまった」
「いや、大丈夫だ。そっちもイリヤとか遠坂がこき使って大変だっただろ」
「それはいつものことだがな」
二人して笑いあうとイリヤと凛に睨まれた。
「さて、メシにしよう」
「いただきます」
だが、彼女たちはその夕食の時間もやたらとアーチャーを構い倒す。基本的にアーチャーは食事中は静かだ。だけど、話を振られればきちんと受け答えをする。今日は賑やかな食卓の中心はなぜかアーチャーだった。
ご飯を食べながらも胸がムカムカしてくる。今までに何度かあったこの感情の名前はまだ知らない。

食事を終え、居間でそれぞれがくつろぐ。今日は片付けをしたらさっさと帰ろうと思い、アーチャーに声をかけようとしたら、イリヤが駆け寄ってきた。
「ねえ、アーチャー、今日はここに泊る?」
「ああ、そうだな」
アーチャーが頷く。それはいつものことだ。普段はわざわざイリヤが確認をとることもないくらいに。だけど、今日だけは。
「いやだ!」
「……士郎?」
「どうしたの?」
驚いた顔のアーチャーと楽しそうに笑うイリヤ。それらを見ている凛とセイバー。
「やだやだ!」
「落ち着け、士郎。どうしたというのだ」
「なんで、イリヤも遠坂も意地悪するんだよ!」
「さあ、なんのことかしら」
イリヤが肩をすくめて、凛がアーチャーに目配せする。アーチャーは頷いてケーキをだそうと台所に向かう。それがトドメとなった。声を出さずに会話している。
「いやだ!」
保冷剤を入れて隠していたケーキをとりだそうとしたアーチャーの背中に士郎が張り付く。
「士郎?」
「アーチャーは俺のだからな!」
そう叫んで泣きだした。人目をはばかることなく大声で泣きながらアーチャーにしがみつく。
「あ~あ、泣いちゃった」
「やりすぎたかしら」
うろたえるアーチャーと泣きじゃくる士郎に凛とイリヤはどうしましょうと顔を見合わせた。ちょっとしたイタズラで士郎に嫉妬させようとしただけだが、ここまで感情を爆発するとは予想外だった。感情が蘇ったばかりの士郎にはきつかったようだ。
「バカ! アーチャーのバカ!」
「私が悪いのか!?」
アーチャーも士郎の嫉妬からの不機嫌に気付かなかったので同罪である。あれだけ怒っていたのになぜ気付かないと言いたい。
「とりあえず、どうする?」
「ここはアーチャーにまかせて、あとで謝罪すればいいわ」
「大丈夫ですか、彼らは」
「いいの。嫉妬してるところに私たちがいっても逆効果だわ」
「それもそうね」
三人はそっと居間をあとにした。テーブルの上にはデート用の映画のチケットを置いて。

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2013/04/07 14:52 | Comments(0) | 弓士

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