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2024/05/19 08:16 |
ハッピーデイ!
大幅な遅刻をした凛様の誕生日ネタです。
でも、弓執事と凛お嬢様のパラレルです。


凛は不機嫌を隠そうともせずに、背後で髪を梳いているアーチャーを鏡越しに睨みつけていた。
「お嬢様、今日は大事なパーティーなのですから、もう少し笑顔でいらしたほうがいいですよ」
「わかってるわよ。パーティーが始まったらいつものように笑うわ。でも、誕生日だというのに接待パーティーに出るように言われたらムカつくわよ!」
「旦那様と奥様は仕事でイタリアに出かけてますからね。誕生日は後日、改めて祝うと旦那様がおっしゃったときは笑顔で聞き分けていたではありませんか」
「そりゃあそうよ! 子供じゃないんだからお父様を困らせるわけにはいかないでしょ。でも、ムカつくのはムカつくのよ! わかる!?」
目を吊り上げる凛が子供じゃないと言いつつ、子供のような態度にアーチャーは笑いを堪えた。
「で、アーチャーは?」
「はい?」
何を聞かれたのかわからずに聞き返すと、凛の顔がさらに不機嫌になる。
「あんたは私の誕生日を祝ってくれないのかしら。今日は一度も執事としての態度を崩してないわよね」
「……申し訳ありません、お嬢様」
謝罪すると凛の機嫌の悪さが最高潮に達した。いつもならこういう時は執事としてでなく恋人として甘い言葉をかけている。凛もそれを期待していたのだろう。
「今日は忙しくて執事としてやるべきことがあったものですから。さあ、お嬢様、用意できましたよ」
髪を整え終えて、後ろに下がって一礼すると凛はふんっと不機嫌なまま立ち上がって、パーティー会場へと向かった。赤いドレスが翻る姿はなんとも美しい。怒っているからこそ。
「……さて、私も準備をしようか」


遠坂家で行われたパーティーは大事な商売相手でご機嫌のまま帰ってもらわないといけない。といっても、凛も馴染みのあるメンツばかりでにこやかに挨拶するのは苦ではない。
一通り挨拶をすませて、和やかに談笑してると広間が突然、暗闇に包まれた。
「えっ?」
こんな余興をすることは聞いてないのでトラブルかもしれないと焦る。まわりで驚いた声はしたが、混乱している様子はない。客に声をかけようとしたところで、小さなステージ上にスポットライトがあてられた。そこにいたのは馴染みのある執事のランサーだった。
「紳士淑女の皆様、驚かせて大変申し訳ありません。これはイベントの一部なのでどうぞご安心ください」
「ランサー!」
驚いてステージに近づいていくと、ランサーはにっこり微笑んで一礼をした。
「皆さまはよくご存じかもしれませんが、今日は凛お嬢様の生誕記念日でございます。我々からプレゼントとケーキを用意いたしました」
ランサーが右手で差し出した扉から現れたのは凛の両親である時臣と葵の二人だった。その後ろから遠坂家のシェフがワゴンに大きなケーキをのせてついてくる。
「お父様! お母様!」
驚いて駆け寄ると、葵が微笑んで凛の頭を撫でた。この年でされると恥ずかしいが、嬉しい。
「イタリアにいってらっしゃったのではないですか?」
「昨日まではね。ついさきほど到着したのよ。今日は凛の誕生日だからね」
「間に合うか、ギリギリまでわからなかったがね」
「誕生日おめでとう、凛」
「おめでとう」
両親に続いて、まわりの客人からも祝われる。凛はくすぐったくて、はにかみながらありがとうございますと返した。
どうやら客も凛の誕生日も知っていたらしく、次々にプレゼントを渡された。
「まさかこんなサプライズをやられるとは思いませんでした。ありがとうございます」
パーティーが始まるまでの不機嫌さもどこかへと吹き飛んでしまった。無意識にアーチャーの姿を探すが見当たらない。
「さて、凛。私達からのプレゼントを受け取ってくれるかな」
父親に言われ、驚きに眼を見張る。帰ってきたことだけでも十分なのにちゃんとプレゼントも用意してくれたらしい。
「嬉しいですわ、お父様。何をくださるの?」
時臣は笑顔で頷いて、扉の方に目を向けた。いつのまにか待機していたランサーが恭しく扉を開く。
「えっ?」
呆然とその姿を見つめる。
ずっと見慣れた恋人兼執事。いつもと違うのは執事服ではなく、仕立てのいいスーツを着ていること。
「皆様に紹介しておきましょう。娘が大切に想っているアーチャーです。これから娘に相応しくなるために教育していくのでみなさんもどうぞよろしくお願いします」
「衛宮アーチャーです。未熟者ですが、皆様のご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします」
アーチャーが一礼する。一流の執事らしく、その姿は流れるように優雅だった。時臣が満足気に頷いて、葵が嬉しそうに微笑んでいる。
「お、お父様? アーチャー?」
突然のことにパニックになって、父親とアーチャーを見比べる。アーチャーとの関係はまだ秘密にしていたのになぜばれているんだろうか。
「凛、私達からのプレゼントはアーチャーとのお付き合いを認めることだ」
「えっ?」
「ああ、言っておくが、結婚とかになると話は別だ。それまでに凛に相応しいと私が認められるくらいになってもらわないといけないな」
「ええっ?」
「アーチャー、凛を泣かせることは絶対に許さないぞ」
「はい、もちろんです」
アーチャーが力強く頷く。
「凛」
パニックになる凛の前にアーチャーが立つ。人前なのに名前呼びとさらに焦ってしまう。
「聞いての通り、旦那様から許可をもらった」
「……どうしてばれてるの?」
「……言峰神父が……」
アーチャーが困ったように笑うのでわかった。綺礼がばらしてしまったのだろう。あの外道神父は凛とアーチャーが困るのを、見たかったかもしれない。こうして父がつきあいの許可が出たことは目論見通りなのか、思惑が外れたのかは知らないが。
「誕生日おめでとう、凛。君が生まれてきて本当によかった。君にプレゼントだ。受け取ってくれるかね」
そう言いながら差し出されたのは細長い箱だった。凛は皆に見守れながら受け取って、箱をそっと開けた。中に入っていたのはネックレス。小さなハートの真ん中にはガーネットがはめ込まれていた。
「これ……私の?」
「ああ、誕生石だ」
凛は喜びで泣きだしそうになるのを堪えて、ネックレスを大事に抱きしめる。
「ありがとう、アーチャー。こんなに嬉しい日はないわ」
「喜んでもらえたら何よりだ、凛」
笑顔のアーチャーに抱きついて、小声で大好きよと告げる。こればかりは他の人には聞かれたくない。アーチャーもそっと私も好きだよ、凛と返してくれた。
周りから拍手で祝われ、アーチャーと凛は顔を赤くしながら、笑いあった。
今日という日に祝福を!

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2013/02/07 22:06 | Comments(0) | 弓凛

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